人文社会科学部研究年報 特集号論文(2021年3月)の報告

     山形大学周辺の小学校の保護者(2018年12月)および山形大学の学生(2019年1月)を対象とするアンケート調査を行い、山形大学人文社会科学研究年報第18号に特集号論文としてまとめました。以下はその概要です。

    特集 地域社会における安心・安全に関する学術的研究

    目次
    1. 本研究プロジェクトの概要
    2.「山形大学周辺における暮らしの安心・安全に関するアンケート(2018)」調査の概要
    3. 災害時のネットワークと災害への備え:山形大学近隣小学校の保護者と大学生の調査より(阿部担当)

    • 五小保護者でも山大生でも、災害時に助けを求めることができる知人の数は少なく(「市内にいない」が約2割)、親族か大学の友人・知人のネットワークを頼りにしている人が多いのが現状です。このため、災害時にはキャンパス周辺で孤立する住民や学生が生じる可能性があります。
    • 災害時の備えの実行率は、「避難場所の確認」を除けば、五小保護者で3割前後、山大生では2割前後です。被災地である宮城県出身の学生でも一人暮らしだと実行率が低くなっており、備えを促す必要があります。
    4. 心の健康に関する相談相手の実態と相談窓口の認知度について:山形市民と山形大学生の事例(大杉担当)
    • 五小保護者、山大生ともに、精神的な悩みの相談相手として友人や知人(保護者の場合は職場の同僚)を挙げていました。全体の1割の方は相談相手が誰もいないと答えていました。相談窓口としては、「山形いのちの電話」以外の公的機関の知名度が十分ではありませんでした(1割未満)。大学生には「なんでも相談コーナー」や「保健管理センターの学生相談室」の知名度が高いこと(6割程度)がわかりました。
    5. 防災情報の発信と入手に関する現状と課題-山形市住民と山形市役所の調査から-(本多担当)
    • 山形市の住民(五小保護者)に対して実施したアンケート調査と、山形市役所の防災担当者からのヒアリング調査をもとに、防災情報の入手と発信に関する現状を比較して、課題を明らかにしました。
    • 入手側(住民)はテレビやラジオの公共放送やインターネット上にある防災情報を入手しようとしているのに対して、発信側(山形市)は緊急速報メールやSNSに防災情報を流して、住民に災害情報を届けようと考えており、両者の行動に差異があります。迅速な防災情報の入手と避難行動につながることから、住民が防災情報にアクセスしやすい環境を整えるとともに、日頃から防災情報の入手を促進させる必要があります。
    6. 児童の安全・安心を考える保護者の空間リスク認知の重要性(山田担当)
    • 児童の安全・安心を考える保護者の空間リスク認知は、詳細であるものの、自宅周辺に偏る傾向があるため、小学校周辺や通学路の安全安心については、保護者間そして小学校との情報共有が必要になります。情報共有の場として、学内行事やPTAは重要な意味を持っていると言えます。
    • 注意力や視野に関して、大人と子供には大きな差があります。保護者の空間リスク認知は詳細ですが、実際に通学する児童の安全安心を確保するためには、地域全体で子供を見守ることが重要です。
    7. 山形大学小白川キャンパス周辺における小学生保護者の不安経験と大学生の問題認識(大杉担当)
    • 山大生の振る舞いに関する不安経験として、五小保護者の約4割が「自転車の運転」、「騒音」、「歩行時のマナー」をあげていました。これらの項目は2013年度の調査でも指摘されており、慢性化しているようです。山大生による回答予想でも同傾向であり、山大生自身も地域の方にとっての迷惑行為であると認識しているようです。
    8. 育児サポートの利用可能性と大学生による地域活動への期待(竹内担当)
    • 大学生による地域活動が子育て家庭の福祉を向上しうるかを検討しました。五小保護者の多くが、山大生に子どもを相手とする地域活動を期待していました。なかでも、非親族による育児サポートを利用できる可能性がない保護者がより期待していることがわかりました。小学生の保護者、とくに非親族による育児サポートが脆弱な保護者の福祉は、大学生に子どもの相手を頼ることで向上する可能性があると考えられます。
    * 詳細は以下の論文をご確認ください。

    ・ 人文社会科学部研究年報:第18号 特集号論文:リンク先

安心・安全プロジェクトの調査結果(2018年12月/2019年01月)の報告

     本研究拠点では,山形大学周辺の小学校の保護者の方(2018年12月)および山形大学の学生(2019年01月)を対象とする アンケート調査を行いました。以下は調査結果の概要です。

    調査結果の概要

    第1部 暮らしの安心・安全(阿部担当)

    • 小学校の保護者は将来の生活に関わる問題や交通事故を不安と感じる一方、災害への不安は低い傾向でした。
    • 災害時に助けを求めることができる知人の数は少なく(市内にいないが約2割)、親族ネットワークを頼りにしている人が多いようでした。
    • 大学生の回答では、災害への備えは家族まかせが多いようでした。災害時には家族以外に大学の友人・知人ネットワークもあると考えている学生が3割程度いました。
    第2部 防災情報の入手(本多・山田担当)
    • ハザードマップの認知度や山形市が発表している防災情報の入手に関する調査では、小学校の保護者の5割〜6割は「見たことがある」または「入手している」と回答している一方で、大学生は2割程度でした。
    • 地震発生時の避難場所情報に関しては、保護者で4割,大学生の2割強程度しか入手していないようでした。
    第3部 山形大学や山大生との関わり(大杉担当)
    • 山大生の振る舞いに関する不安経験として、小学校の保護者の約4割が「自転車の運転」、「騒音」、「歩行時のマナー」をあげていました。これらの項目は2013年度の調査でも指摘されており、慢性化しているようです。山大生による回答予想でも同傾向であり、山大生自身も地域の方にとっての迷惑行為であると認識しているようです。
    第4部 精神的健康と相談窓口(大杉担当)
    • 小学校の保護者、大学生ともに、精神的な悩みの相談相手として友人や知人(保護者の場合は職場の同僚)を挙げていました。全体の1割の方は相談相手が誰もいないと答えていました。相談窓口としては、「いのちの電話」以外の公的機関の知名度が十分ではありませんでした(1割未満)。大学生には「なんでも相談コーナー」や「保健管理センターの学生相談室」の知名度が高いこと(6割程度)がわかりました。
    第5部 山大生によるボランティア・地域活動に対する考えと実態(竹内担当)
    • 保護者が山大生に望む活動は、「地域に住む子どもを対象とした活動」が5割でした。一方,山大生が興味のある活動は「地域におけるスポーツ・文化・芸術・学術に関係した活動」が約4割と最も多くなりました。山大生はさまざまな活動に興味があるものの、実際に活動できる分野は限定されていることも示されました。
    * 詳細は以下の報告書(リーフレット)をご確認ください。

    ・ リーフレット:リンク先

前身プロジェクトの調査結果(2013年12月)の報告

     本研究拠点の前身となった「山形市における安心・安全に関する学際的研究」プロジェクトでは,山形大学周辺の小学校の保護者の方を対象とする アンケート調査を2013年12月に行いました(山形大学周辺における暮らしの安心・安全に関する調査2013)。その結果,「子育てや災害時に頼れる人の少なさ」,「避難地図や避難場所といった情報の浸透具合」, 「大学生の自転車運転への不安」などが浮き彫りとなり,安心・安全な地域づくりへの課題が明らかとなりました。

    * 詳細は以下の報告書(リーフレット)と,論文をご確認ください。

    ・ リーフレット:リンク先

    ・ 社会文化システム研究科紀要:第12号【特集】 
      山形市における安心・安全に関する学際的研究: リンク先
      1. 本研究プロジェクトの概要
      2. 「山形大学周辺における暮らしの安心・安全に関するアンケート」調査の概要
      3. 子育て世帯における日常と災害時のネットワーク
        ー山形大学周辺における小学生の保護者に対する調査よりー
      4. 山形大学周辺の小学校区における災害リスク認知の現状と課題
      5. 山形大学小白川キャンパス周辺における小学生保護者の不安経験と葛藤懸念

お問い合わせ

    安心・安全プロジェクト連絡先

    住所:〒990-8560 山形市小白川町一丁目4ー12 人文学部
    電話:023-628-4862
    E-mail:anshinp2018[at]gmail.com
    ※[at]を@に変えてください。

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